社会では、常に時代の流れとともに、新たな理念や価値基準が生まれ、新たな諸課題も生まれてきます。グローバル社会、情報化社会、少子高齢社会、地方創生・地域の活性化、多文化共生社会、持続可能な社会、災害からの復興など現代社会が直面している諸問題はさまざま存在します。このような状況のもとで、世界と日本の全体を視野に入れながらも、私たちがより暮らしやすい健康で文化的な地域社会をどのようにして創り出し発展させていくのかということが、重要な課題となっています。
行政政策学類の理念は、地域社会が直面している課題を広く学際的な観点にたって教育研究し、地域や社会のニーズに応えることのできる有為の人材を養成するという点にあります。ここでいう学際的な観点というのは、既存のさまざまな学問分野が、それぞれの学問分野の枠を超えて共同して共通の問題にとりくむ、ということを意味しています。行政政策学類は、法学、政治学、行政学、社会学、歴史学、文化研究などさまざまな学問分野から成り立っていますが、これらの学問分野においてそれぞれバラバラに教育や研究を行うのではなく、相互に協力しながら、地域と社会のかかえる諸問題に共同でとりくむという点に、本学類の大きな特色があるということです。
また、「地域政策と法」「地域社会と文化」の2つのコース名称にも見られるように、本学類は、「地域」を共通の対象とし、地域とともに学修を深めるということも特色としています。地域や現場での実践を幅広く各分野の工夫で取り入れながら、地域の諸主体とともに、問題解明や解決につながる教育を目指しています。
ただし、以上のことは、それぞれの学問分野の体系的な学修をおろそかにしていいということでは決してありません。真に学際的な観点及び地域に学ぶ観点というのは、それぞれの学問分野の基礎的学修をしっかりとふまえたうえで、複数の学問分野が、共通の問題に共同してとりくんでいくということを意味します。そこで、各学問分野の基礎的・体系的な学修がしっかりとできるように、「コース制」を導入しています。皆さんは一つのコースに所属して、そのコース内での学修を基礎から応用へと系統的に積み重ねながら、あわせて学類全体に共通する横断的な科目を各自の関心に応じて履修することになります。このようなカリキュラムに地域を軸とする学際的学びを重視するという本学類の特色が、カリキュラムのなかに一層明確に表れています。
さらに、行政政策学類は、福島大学では唯一夜間主を設けています。働きながら学ぶ学生と交わりながら学修を進めることも、行政政策学類の一つの特徴と言えます。
行政政策学類には、「地域政策と法」「地域社会と文化」の2つのコースがあります(夜間主も同様です)。コースは、皆さんが興味・関心を持った学問分野や社会の諸問題について、系統的に学修していくために設けられたものです。コースには2年次(第3セメスター)から所属します。皆さんは1年次の段階で、自分の興味・関心がある学問分野や社会の諸問題を発見するとともに、行政政策学類でどんなことが学べるかをよく理解し、コースを選択していくことになります。コースに所属する手続きは、1年次の11月頃にガイダンス等で説明します。
コース決定後は、卒業時までそのコースに所属することになりますが、第4セメスターに入る前に、所定の手続きを経ることで、コースを変更することができます。
「地域政策と法」コースでは学士(法学)が、「地域社会と文化」コースでは学士(社会学)が卒業時に授与されます。
本学類は、法・政治・行政・社会・文化等、学際的な観点から、地域社会が直面している諸課題を学ぶとともに、実践的な学びを得て、よりよい地域社会を作り出すために必要な「専門知」、「実践知」を身につけ、さらに新たな「創造知」を持って、「知」の社会還元をもたらす主体的な人材を養成する。
本学類は、地域主体の時代にふさわしい新しい地域社会づくり、及び地域社会の活性化に貢献する人材を養成するために、「研究分野の知識」「問題探求・調査・解読能力」「課題解決の実践力・提案力」「創造するための学際的な応用力」「表現力・コミュニケーション能力」の5つの能力の修得を、ディプロマポリシーとします。夜間主も同じ学類の学生として同様の能力を身につけ、職業の知識あるいは社会生活をもとにしたスキルを伸ばします。
Ⅰ.研究分野の知識
法・政治・行政・社会・文化等の研究分野に関する基礎的かつ専門的知識を修得している。
Ⅱ.問題探求・調査・解読能力
国・地域・社会が直面している諸課題を自ら発見し、調査・分析する能力を修得している。
Ⅲ.課題解決の実践力・提案力
発見し、調査・分析した諸課題を考察し、地域の諸主体とともに、解決のための調整力を持って、実践的な解決を実行できる能力を身につけている。
Ⅳ.創造するための学際的な応用力
他者との連携のもと、社会の構成員(個・集団を問わず)の価値を尊重しつつ、相互に暮らしやすい地域社会を作り出し、社会に貢献するため、学際的な構成力を持って、創造的な提案ができる能力を身につけている。
Ⅴ.表現力・コミュニケーション能力
修得した知識、考察した結果、実践した成果や、価値を第三者に効果的に伝える力を培い、多様な主体との議論に参加できる能力を身につけている。
[地域政策と法コース]
Ⅰ.法学・政治学・行政学関連の科目を履修し、「法政策」「地域行政」にかかわる知識を多角的、総合的に身につけている。
Ⅱ.国及び地域の課題を自ら発見し、必要な法令・判例や文献をひも解き、地域の調査を行ったりすることによって実情を十分に把握し、読み方・調べ方・まとめ方・報告の仕方などの基本的技術を活用することができる。
Ⅲ.現代社会の諸課題、地域社会の問題について法学、政治学、行政学などの観点から多角的にアプローチし、かつこれらの総合的な思考・実践を地域の諸主体とともに見出しながら社会貢献できる。
Ⅳ.地域社会と文化形成にかかわる関連の科目を学際的に履修して、視野を広げて深い洞察力を身につけた上で、適切な権利意識をもって政策提言ができる。
Ⅴ.修得した知識の活用能力、批判的・論理的思考力、課題探求力、問題解決力、表現能力、を駆使し、その成果を的確に伝達することができる能力を備え、他者と協力して活動できるコミュニケーション能力を修得している。
[地域社会と文化コース]
Ⅰ.地域社会と文化形成にかかわる科目を総合的に履修し、知識を多角的に身につけている。
Ⅱ.地域社会や文化にかかわる諸課題を自ら発見し、地域の固有性と多様性を現地調査によって十分に把握したり、文献や資料その他の情報源を見つけ出したりしながら、自ら立てた問題に照らし解読することができる。
Ⅲ.現代社会の諸課題、地域社会の問題や、歴史理解、多文化共生、国際交流、福祉、環境等にかかわる問題の解明・解決の方向性を地域の諸主体とともに見出しながら社会貢献できる。
Ⅳ.法学・政治学・行政学など関連の科目を学際的に履修して、様々な分野の関連性を思考しながら、積極的に新しい地域づくりを提案することができる。
Ⅴ.修得した知識の活用能力、批判的・論理的思考力、課題探求力、問題解決力、表現能力、を駆使し、その成果を的確に伝達することができる能力を備え、他者と協力して活動できるコミュニケーション能力を修得している。
行政政策学類では、地域主体の時代にふさわしい新しい地域社会づくり、及び地域社会の活性化に貢献する人材を養成するために、「研究分野の知識」「問題探究・調査・解読能力」「問題解決の実践力・提案力」「創造するための学際的な応用力」「表現力・コミュニケーション」の5つの能力をディプロマポリシーとして掲げています。これらの達成に向けて、学類および各コースのカリキュラムを以下の方針で構築しています。
上記に掲げた能力を育成するために、「理論知」を習得するための系統的な専門教育と、「実践知」を培う地域社会の現場における学修と、「創造知」を持って主体的な態度を身につける学修を中核とするカリキュラムを、以下の方針で構築する。
1.昼間に、学類共通科目・学類基礎科目・コース専門科目・演習・卒業研究からなる専門領域の科目を設置する。夜間主に、夜間主共通科目・夜間主コース専門科目・演習・卒業研究からなる専門領域の科目を設置する。なお、夜間主では、通信科目として放送大学を活用した科目を配置する。
2.主体的で継続的な「深い学び」を身につけるためのアクティブ・ラーニング※を、すべての授業形態において実施する。特に演習などの少人数クラスにおいては、知識の定着・確認を行うとともに、批判的・論理的思考力や表現能力を育成する。実習・課題研究やコア・アクティブ科目などの問題発見や問題解決につなげる学修においては、知識の応用・活用を図り、多様な価値観への理解能力やコミュニケーション能力を育成する。
※アクティブ・ラーニングとは、「教員による一方向的な講義形式の教育とは異なり、学修者の能動的な学修への参加を取り入れた教授・学習法の総称。学修者が能動的に学修することによって、認知的、倫理的、社会的能力、教養、知識、経験を含めた汎用的能力の育成を図る。発見学習、問題解決学習、体験学習、調査学習等が含まれるが、教室内でのグループ・ディスカッション、ディベート、グループ・ワーク等も有効なアクティブ・ラーニングの方法である。」(文部科学省中央教育審議会資料用語集「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて~生涯学び続け、主体的に考える力を育成する大学へ~」。平成24年8月28日)
3.演習は、少人数教育で実施する。昼間に、学際的に課題に取り組む問題探究セミナーと関心事項を深めて学修する専門演習を設置する。夜間主に、問題探究セミナーと関心事項を学生協働で深める協働演習を設置する。
4.「理論知」と「実践知」を培う学修の集大成として、自らの問題意識のもとに学修成果を「創造知」を持って結実させた卒業研究を作成する。
各コースの「研究分野の知識」に基づいて、コース固有の「問題発見・調査・解読能力」「解決能力・応用能力」の修得のため、カリキュラムを以下の方針で構築する。
《地域政策と法コース》
法・政治行政に関わる基礎的・学際的及び専門的知識に基づき、調査能力、情報解読能力、思考力、応用能力を育成する。
1.国及び地域社会において生ずる社会現象に広く対処しうる能力を育成する観点から、法・政治行政分野の基本的な思考方法を理解し、当該分野の学問領域を広く俯瞰しうる基礎科目を置く。
2.法・政治行政分野の個別課題に専門的かつ分野横断的に取り組むために、当該分野に関する基礎科目・応用科目及び演習科目を置き、併せて現場体験を重視した科目、また問題解決に向けた調査能力、他者と協働する力を涵養しうる科目を設置する。
3.視野を広げて深い洞察力を身につけさせるために、「地域政策と法」コースが開講する科目のみならず、広く学際的に履修できるカリキュラム構成とする。
《地域社会と文化コース》
地域・社会・文化研究に関わる基礎的・学際的及び専門的知識に基づき、調査能力、情報解読能力、思考力、応用能力を育成する。
1.地域社会の特性・諸課題の現状把握や情報解析、現代社会の諸問題、歴史、異文化、国際交流に関わる複雑かつ多様な問題について、知見を広め、考察するために必要な能力の育成をはかる基礎科目を置く。
2.地域・社会・文化研究の個別課題に専門的かつ分野横断的に取り組み、「社会計画」「社会学」「地域文化」「比較文化」の4つの分野が学べるように、当該分野に関わる基礎科目・応用的科目及び演習科目を置き、併せて個別課題に専門的に取り組むための実習科目、また問題解決に向けた調査能力、他者と協働する力を涵養しうる科目を開講する。
3.視野を広げて深い洞察力を身につけさせるために、「地域社会と文化」コースが開講する科目のみならず、広く学際的に履修できるカリキュラム構成とする。
地域政策と法コースにおいては、法学、政治学及び行政学を中心とした科目を履修していきます。その教育目標は、「新しい地域づくり」を目指し、①「法・政治」及び「地域行政」にかかわる知識を総合的、多角的に身につけ、②国及び地域の課題を自ら発見し、必要な法令・判例や文献を紐解き、地域の調査に行ったりすることにより実情を十分に把握し、基本的なリテラシーを活用し、③市民としての政治参加、企業法務及び公務員としての政策形成などにあたり、国及び地域のさまざまな社会現象に対応する問題解決を、地域の諸主体とともに志向し、社会貢献ができる、というような人材を養成することにあります。
地域社会と文化コースには、社会計画系の科目、社会学系の科目と、多様な文化研究系の科目(教育、歴史、ジェンダー、比較文化など)が置かれています。
このコースの大きな特徴は、「新しい地域づくり」という課題に応えるために、社会学系の科目を基礎にすえつつ、社会や文化が直面している諸問題を地域に即して、歴史的にあるいはグローバルな視野から考えていく力をつけるために各科目が配置されていることです。こうした力を獲得すること――それは公務員/民間企業を問わず、これからの日本社会の担い手にとって必要不可欠なものです。
また、このコースが提供する多様な学問領域や問題領域にわたる科目群は、皆さんの幅広い問題関心を受けとめる懐の深さがあります。自分の問題関心や将来の進路に合わせて時間割を組み、学修を主体的に進めていけるという魅力があります。