地域で活躍する理科の先生には、科学および技術に対する幅広く深い理解と理科教育に対する理解を基にした実践力はもちろんのこと、地域が持つ自然・歴史・文化・社会などの特徴に目を向け、地域の文脈に沿った科学的教育活動を支える力が求められます。
本プログラムでは、自然環境を土台としつつ多様な視点で地域を捉え、地域素材を用いた教材開発の手法や指導法をプロジェクト学習や問題解決型学習などを通じて学びます。また、小・中学校における経験を通じて子どもが持つ考え方や問題意識を学ぶほか、科学館等の施設における経験通じて、子どもと保護者、地域における科学活動に対する理解を深めます。加えて、「地域を理解し教材とする力」、「子どもを理解する力」、「学びを支え続ける力」を意識し、省察的に自身の取り組みを見つめることで、地域の理科の先生に必要とされる資質・能力の総合的な修得を目指します。
コア科目を中心に、基礎科目、観察・実験科目、AL演習科目、指導法科目の計5科目群で構成されます。それぞれの科目群は、以下のような特徴を持っています。
図 地域と学ぶ未来の理科先生 特修プログラムのカリキュラム概念
福島大学が掲げる教育理念における「世界を見据えた演繹的な学び」と「福島にねざした帰納的な学び」の往還を進めるための科目です。体系的でグローバルな意味合いを持つ科学に関する知識・技能を、子どもの見方・考え方に合わせて地域の自然や文化を教材化し、地域課題の解決にいざなうための資質を養います。
「地域理科実践演習Ⅰ」では、地域や身近な自然事象を教材化する際に必要となる基礎的な考え方と、子どもの理解と学びを支えるために必要となる理論の基礎的理解を進めます。「地域理科実践演習Ⅱ」では、対象地域でのフィールドワークや学校現場への参加を通じて経験を基にした学びを深め、理論と実践の往還を進めていきます。
プレ教育実習の位置づけとなる「理科教育インターンシップ」では、小・中学校インターンシップ(70時間)と、科学館インターンシップ(20時間)を経験することで、実践上の課題を把握し教育実習に向けた自己課題を整理していきます。
この科目群では、いずれもアクティブ・ラーニング型で授業を進め、チームによるプロジェクト型の学びと、個人および小グループによる問題解決型の学びを組み合わせていきます。受講に際しては、他の科目群の科目における学びに課題意識を持ち、理科を専門とする教員としての学んでいく基本を確立していく必要があります。主体的な取り組みが必要とされることはもちろんのこと、対話や協働による学びの意味を考えて学びを深めていく努力が望まれます。
物理・化学・生物・地学に関する基本的な講義科目です。教員として必要とされる自然科学の体系的な理解を深めます。この科目群の受講に際しては、地域の自然事象や日常生活における身近な事象を教材化する場面への応用を意識し、どのように関連付けるかを意識することが望まれます。
小学校理科の物質・エネルギー領域、生命・地球領域に関する観察・実験への理解を深める科目と、中学校理科における観察・実験の基礎的および原理的な理解を深める科目で構成され、自然事象と向き合うための基礎的な知識・技能を修得します。この科目群の受講に際しては、基礎科目と同様に教材化へ向けた応用の意識と、小・中学校における観察・実験などの場面を想定し、必要となる器具操作の技能や安全対策への意識を持つことが望まれます
小学校・中学校理科で取り扱う教科内容を意識した、AL(アクティブ・ラーニング)を主体とする演習科目です。物理・化学・生物・地学各領域の特徴を意識しながら、小学校理科における問題解決、中学校理科における探究過程のあり方について学びを深め、児童生徒と一緒に学びを深めていくための手法を修得します。この科目群は、小・中学校で求められる、主体的・対話的で深い学びを意識して授業を展開します。受講に際しては、どのような工夫を行っているか意識し、自身も活用することを意識することが望まれます。
小学校及び中学校・高等学校(理科)の免許取得に必要となる科目です。この中では、模擬授業などを通じて指導に関する基礎的な知識・技能を修得するほか、学習科学など理論の観点からどのような指導が望ましいかを検討していきます。この科目群の受講に際しては、子どもの自然事象に対する考え方を意識し、日常生活で見られる自然事象において疑問や課題意識がどのような場面で見られそうかを意識することが望まれます。
人間発達文化学類 または 共生システム理工学類 に所属し、小学校1種教員免許状、中学校1種教員免許状(理科)、高等学校1種教員免許状(理科)のうち1種類以上の取得を希望する者とします。
加えて、4. 履修モデルよりいずれか1つを選択し、その条件を満たすことが必要です。
本プログラムでは、取得を希望する免許種や関心に合わせ、以下に示す3つの履修モデルを用意しています。プログラム開始時に履修モデルを決定しますが、取得予定の免許種に変更が生じた場合は途中で変更することが可能です。
モデルA 理科に強い小学校教員モデル - 人間発達文化学類生 対象
・ 小学校教員を主免許として登録(予定)の者で、理科に強い教員を目指している
モデルB 中学校理科との接続に関心が強い小学校教員モデル - 人間発達文化学類生 対象
・ 小学校教員を主免許として登録(予定)の者で、小学校理科と中学校理科の接続に強い関心をもつ教員を目指している
モデルC 中学校理科に関心が強い教員モデル - 共生システム理工学類生 対象
・ 中学校教員(理科)または高等学校教員(理科)を主免許として登録(予定)の者で、中学校理科と高等学校理科の接続に強い関心をもつ教員を目指している
コア科目「地域理科実践演習Ⅰ」第1回目のガイダンスにおいて履修モデルを選択し、履修登録を済ませることでプログラムの履修開始となります。
なお、受講希望者が多数となった場合は、受講調整を行うことがあります。
基盤教育 4単位、専門教育 26単位、計30単位の修得が必要です。
コア科目6単位は必修科目となります。コア科目のうち理科教育インターンシップは、地域理科実践演習Ⅰ・Ⅱの単位を修得した者が受講可能です。
基礎科目、観察・実験科目、AL演習科目、指導法科目は一部必修または選択となります。履修モデルごとに必要修得単位数が異なりますので、履修基準表(後述)にしたがって科目を履修してください。
各履修モデルに沿った教員免許状を取得(見込みを含む)し、履修基準の修得単位を満たした者をプログラム修了者と認定します。
※印の科目は、中学校1種免許(理科)又は高等学校1種免許(理科)の教職登録者のみ履修可能です。