本学類には、「地域政策と法」コース、「地域社会と文化」コースの2コースが設置されていて、それぞれのコースごとに履修体系が設定されています。これは、皆さんが関心を持つ専門領域の基礎知識を身につけ、自分自身の研究テーマを発見し、それに関連した専門領域の科目を系統的かつ計画的に選択・履修できるようにするために、モデル的に示したものです。授業計画は、皆さんが自らの興味関心、明らかにしたいと考えるテーマ、将来の進路との関係などから自主的に作り上げるものであり、ここに示される通りに従う必要はありませんが、履修計画の一つの例として参考にしてください。
「地域政策と法」コースにおいては、法学、政治学および行政学を中心とした科目を履修していきます。その教育目標は、「新しい地域づくり」を目指し、①「法・政治」および「地域行政」にかかわる知識を総合的、多角的に身につけ、②国及び地域の課題を自ら発見し、必要な法令・判例や文献を紐解き、地域の調査を行うことにより実情を十分に把握し、基本的なリテラシーを活用し、③市民としての政治参加、企業法務および公務員としての政策形成などにあたり、国および地域のさまざまな社会現象に対応する問題解決を、地域の諸主体とともに志向し、社会貢献ができる、というような人材を養成することにあります。
「地域政策と法」コースには、①政治学や行政学の基礎を習得し、地域レベルの政策課題の系譜や取り組みの現状ついて学ぶための科目、あるいは、②基幹的な法分野の科目、応用的またはユニークな法分野の科目などが置かれています。
地域社会が抱える問題を認識し、その解決方法を探るためには、それら諸問題を生み出す構造的・動態的「土台」である政治や行政についての理解が不可欠です。具体的には、基礎的な科目として、現代の政治の諸現象を考える際の基本的視点や方法を学ぶ「現代政治論Ⅰ・Ⅱ」、政治・行政を動態的に学ぶ「政治過程論Ⅰ・Ⅱ」、国と地方の行政について、歴史的・構造的な捉え方を学ぶ「行政学Ⅰ・Ⅱ」、「地方行政論」、地域の具体的政策課題と政策形成の過程を検討する「公共政策論Ⅰ・Ⅱ」などが配置されています。そして、専門的な科目として、政治行政を国際的視点から学ぶ「国際政治論Ⅰ・Ⅱ」、地方レベルでリアルに分析する「地方政治論Ⅰ・Ⅱ」、政治を歴史的・思想的に捉える「政治思想史Ⅰ・Ⅱ」などが配置されています。
また、法学の学修には、基礎的な科目から学び始めて、次第に応用的な科目へと進んでいく、体系的かつ段階的な履修が必要となります。具体的には、基礎的な科目として、「現代法学論」のほか、実定法に関し、「憲法(人権)Ⅰ・Ⅱ」、「憲法(統治)Ⅰ・Ⅱ」、「民法総則」、「民法(不法行為)」、「民法(債権総論)」、「民法(物権)」、「民法(家族)」、「刑法Ⅰ・Ⅱ」、「民事裁判法Ⅰ・Ⅱ」、「刑事裁判法Ⅰ・Ⅱ」、法と社会との関係を考察する「法社会学Ⅰ・Ⅱ」などが配置されています。そして、応用的な科目として、「民法(担保物権)」、「民法(相続)」、「商法Ⅰ・Ⅱ」、「行政法総論Ⅰ・Ⅱ」、「行政救済法Ⅰ・Ⅱ」、「地方自治法Ⅰ・Ⅱ」、「環境法」、「国際法Ⅰ・Ⅱ」、「労働法Ⅰ・Ⅱ」、「社会保障法」、「経済法」などが配置されています。
法律は、政治行政と密接な関係があり、政治行政の理解には不可欠ともいえます。他方で、伝統的な法学教育は、法の解釈技術を身につけることを目的としていましたが、最近では、特に幅広い社会学的視野にたって法の役割や機能をとらえ、実社会とのかかわりにおいて法の解釈や適用を行っていく能力が法学教育を受けた者の資質として要求されるようになっています。このような能力の滋養は、法学のみならず、政治学および行政学の科目をも広く受講することによって可能となります。「地域政策と法」コースの学生は、さまざまな科目を積極的に履修し、本学類のメリットを最大限に活用することを希望します。
「地域社会と文化」コースには、社会計画系の科目、社会学系の科目と、多様な文化研究系の科目(教育、歴史、ジェンダー、比較文化など)が置かれています。
資格関連の科目として、①学芸員、社会教育主事に関する科目、②教職に関する科目、③各種語学検定に関連する科目が多く配置されているのも「地域社会と文化」コースの特徴です。
より大きな特徴は、「新しい地域づくり」という課題に応えるために、社会学系の科目を基礎にすえつつ、社会や文化が直面している諸問題を地域に即して、歴史的にあるいはグローバルな視野から考えていく力をつけるために各科目が配置されていることです。こうした力を獲得すること――それは公務員/民間企業を問わず、これからの日本社会の担い手にとって必要不可欠なものです。
並んでいる科目名を見ただけでも、このコースがいかに多様な学問領域や問題領域をカバーしているかが理解できるでしょう。「地域社会と文化」コースには、みなさんの幅広い問題関心を受けとめる懐の深さがあり、自分の問題関心や将来の進路に合わせて時間割を組み、学修を主体的に進めていけるという魅力があります。
1年次の学類基礎科目である「社会と文化の理論」と「社会学原論Ⅰ」が、「地域社会と文化」コースの導入的な科目ですが、では、2~4年次でどのような科目をどのような順番で履修していけばいいのでしょうか?
ここでは、参考のために4つの分野を示し、それぞれについて説明していくことにします。これらは、あくまでみなさんが関心をもっている専門領域の基礎知識を身につけ、自分自身の研究テーマを発見し、それに関連した専門科目を順序よく、系統的に履修していくためのひとつのモデルとして示したものです。これらのモデルに沿ってそれぞれの分野に打ち込むことも、また、自分の問題関心にもとづいていくつかの分野や領域を横断してテーマを追究することももちろん可能ですし、テーマによってはそれが必要不可欠となるでしょう。
それでは、以下、「社会計画」、「社会学」、「地域文化」、「比較文化」の4分野について、説明します。
①「社会計画」分野を中心に学ぶために
「社会計画」分野では、まちづくりやコミュニティづくり、より良い地域環境の形成など新しい地域づくりと関連した科目や、高齢社会に対応した人々の基礎的なライフスタイルや社会福祉のあり方に関連する科目を配置しています。
地域社会が抱える様々な問題に対処するためには、法による規制や経済的な誘導に加え、地域の課題を設定した上で一定の目標を掲げ、実行していく計画的なアプローチが求められています。特に、社会構造が多様化した現代においては、地域の現状に即して柔軟に対応できる計画的手法の有用性が認識されるようになってきました。具体的には、都市・農村といった空間的区分に加え、人口、産業、福祉、環境といった個別課題に対して、各々の特性に応じた計画が実施されています。こうした計画づくりには、行政のみならず地域の住民や企業といった関係主体の参加のもとでの意思決定プロセスが求められています。
こうした課題に接近するため、社会計画的思考やその歴史と方法、望ましい計画のあり方などを学ぶ「社会計画論」、計画づくりに不可欠な地域社会や住民生活の現状を、現地調査を通じて科学的に把握する方法を学ぶ「社会調査論」、そして以上の基礎的な科目の学習に加え、福祉関連科目として福祉や生活のあり方を勉強する科目として、高齢社会に対応した福祉社会・福祉政策のあり方、社会福祉の技術と方法について学ぶ「社会福祉論」が配置されています。
また、今日大きな社会問題となってきた環境問題を中心に、人間と自然とのかかわりや野生動物保護、熱帯雨林・河川の開発の問題などを具体的・実践的に学ぶ「地域環境論」、地域社会における福祉のあり方について学ぶ「地域福祉論」、情報化社会の中での情報と、行政・政治・法律・社会・地域との関わりについての基礎的な問題を扱う「情報社会論」を配置しています。
さらに、福祉の現場経験を積む「社会福祉課題研究Ⅰ・Ⅱ」が用意されています。
②「社会学」分野を中心に学ぶために
「社会学」分野のテーマは、激動する地域社会の動きや社会的な諸問題を総合的にとらえること、そしてそれらをよりよい方向に導いていくにはどうすればいいのかを追究することです。
この分野で系統的な学修を進めていくには、次の3つの方向が考えられます。第1は、現実の社会の総合的な把握をめざすという社会学の学問としての性格を深く追究していく方向、第2は、社会学の個別領域の学修をふまえ、具体的な社会的諸問題を取り上げていく方向、そして第3は、狭い意味での社会学の枠にとらわれず、関連する他の領域の学問の成果にも積極的に学びながら学修を進めていくという方向です。専門講義や演習、問題探究セミナーⅡ・Ⅲなどを履修し、自分の問題関心を深めながら、これら3つのうちのどのような方向を選択するかを意識してみてください。
1年次の「社会と文化の理論」「社会学原論Ⅰ」、そして2年次の「社会学原論Ⅱ」「地域社会学」は、社会学という学問の性格を知るうえで重要であり、かつ現代社会を理解していくための基礎的な科目でもあるので、しっかり履修してください。
そのうえで、3年次では、社会学の個別領域として「メディア論」「スポーツ社会学」などの科目が用意されています。また、「ジェンダー論Ⅰ・Ⅱ」や「情報社会論」「社会調査論」をはじめ多くの社会学関連科目があり、これらを各自の関心に合わせて、積極的に選択、履修していくことも重要です。
③「地域文化」分野を中心に学ぶために
「地域文化」分野では、地域社会の歴史や社会教育、ジェンダーといった問題を中心に学ぶことになります。地域社会や文化がどのように歴史的に形成されてきたか、地域社会における社会教育のあり方やそれがどのような問題に直面しているか、地域社会を考える上で、現実にも学術研究においても重要になってきているジェンダーのあり方などが個別の研究領域です。
基礎的な科目としては、「考古学I」「文化史」「社会教育論(生涯学習論を含む)I・II」「ジェンダー論I」といった一連の科目が該当します。さらに関心にあわせて、「考古学II」「地域史I・II」といった歴史系の科目や、ジェンダー研究のより個別的・専門的な内容を扱う「ジェンダー論II」といった科目の履修が求められます。地域文化についてのより幅広い学修のためには、「地域社会学」「スポーツ文化論I・II」「スポーツ社会学」、福祉系の科目「社会福祉論」「地域福祉論」などの受講も役に立つはずです。
歴史学を学ぶ上では、実際に古文書を読んだり、その扱いについて「古文書講読」や「古文書学実習」などで学んだりすることも大事です。社会教育分野でも、公民館や現場で活躍する人々について知ることができる「社会教育実習」を選択することで、より深い理解が得られるはずです。社会教育主事・学芸員資格に必要な科目も用意されており、さらに専門的な知識を身につけることも可能です。
ほかにも、比較文化関係の科目を学ぶことで、日本の歴史・社会を別の視点からとらえ直す力を養ったり、関連するテーマの特殊講義や基盤教育科目、社会学、法学関連の科目の受講で、社会教育やジェンダー問題の理解に必要な知識や視点を学ぶこともできます。他コースの案内や各年度に提供される科目のシラバスを参考にしながら、自分の関心にあわせて、計画的に履修を進めてください。
④「比較文化」分野を中心に学ぶために
「比較文化」分野のテーマは、地域社会の国際化にともなって生じてきた諸問題を解決するために、多文化を理解するとはどういうことか、多文化受容とはどうあるべきかを追究することです。
したがって、この分野を系統的に学んでいくには、まず2年次で「比較地域文化論」を履修し、多文化理解の方法と多文化受容のあり方を考える基礎を身につけてください。
3年次では、こうした文化比較の理解のうえに立って、「言語文化論Ⅰ・Ⅱ」を選択、履修することがのぞまれます。各地域の文化についてさらに理解を深めるためには、「欧米文化論Ⅰ・Ⅱ」を選択、履修してください。また、地域の文化が日本の文化とどのように交流してきたのかを学ぶためには、「国際文化交流論」を選択、履修してください。
「比較文化」分野を中心に学んでいくには、こうした科目の履修だけでなく、自分が取り組もうとする地域の言語をしっかり学ぶことも大切です。基盤教育科目の語学ならびに「英語コミュニケーション」「English Presentations」「中国語コミュニケーション」の選択もぜひ考えてください。
加えて、日本の地域文化についての理解を深めるために、「歴史・ジェンダー」分野における関連科目から各自の関心に合わせて選択、履修することも重要でしょう。