新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。入学直後は友達づくりや新しい生活環境への対応などで気持ちに余裕がないと思いますので、このページは後日、機会があるごとに少しずつ読み返してください。大学で学ぶことの意義を感じてもらえれば幸いです。
福島大学の共生システム理工学類は、「人・産業・環境の共生をめざす科学と技術」の創生・発展を目指して設立され、平成17年4月から学生を受け入れ、文理融合型カリキュラムや実践的研究能力の育成に寄与する事業などを通して、特色ある教育・研究を進めてきました。既に多くの学類卒業生・大学院修了生が社会で活躍しています。また平成31年4月には、学部教育と大学院教育の一貫性を高めるとともに、学修の幅の広さと専門領域での深さのバランスをとることなどを目的として、学類にコース制を導入してカリキュラム改革を行いました。
この学類名には、人・産業・環境などをシステムとして理解して、人間社会が抱える問題を解決し安全・安心な共生社会を創造するための研究と人材育成を行いたい、という目的が表現されています。共生とは、結びつきをもって共に生きることです。工学においてシステムとは、構成要素、要素間の関係(相互作用)、および目的(機能)を内包する集合体のことで、大学も企業も社会も生物も環境も、自動車も机もシステムとして理解することができます。宇宙や原子核の世界さえも、目的や摂理が人知を越えていますがシステムとして考えることができます。
さて、人間は社会を作って共生してきた生き物ですが、人々は現代科学技術による恩恵の限界にも気づき始め、現代人に求められる意識は多様化しています。こんな中、社会においてものごとを大局的にシステムとして考え、主体的に活躍するために必要なのは、スペシャリストではなくジェネラリストとしての素養ではないでしょうか。本学類は、どこかの専門分野にきちんと根っ子をもつ元気なジェネラリストを育成したいと考えています。
そして卒業研究は、主体的に考えて行動し新しい知を生み出す力や、さまざまな社会人力を養成するための必修科目です。そのための準備としての専門科目や基礎科目もカリキュラムに設定されています。また、人として将来学び続けるために必要な教養科目も用意されています。これらは大学というシステムの目的を達成するための重要な構成要素です。
学生諸君には、大学や大学院を卒業/修了し、社会に貢献し、よりよい人生を送るために、今何ができるか考えて行動してほしいと思います。ときには、自分の心をシステムとして分析してみるといいでしょう。すると、論理が通用しない直観的な好き嫌いの要素や、「他者から見た自分」という虚像、楽天的な自分と悲観的な自分、優越感や劣等感の存在、それらの関係性などに気づくと思います。これらも心のシステムに含めて、自分をできるだけ客観的に認識することが重要だと思います。
大学での学修や研究についてのもっと現実的な話としては、「自分は何が分かっていて何が分かっていないのか」という境界を自覚して努力することが重要です。またこのとき、「分かっているつもり」で次に進んでしまうことの蓄積が最大の問題なので、友人や教員と積極的にコミュニケーションをとって確認し、他人の力も上手に借りるという行動が極めて重要です。もちろん他人に力を貸すことは自分の成長にもつながります。
現代において充足感をもって生きていくために最良と思える方法は、たとえ僅かでも人や社会から必要とされる人間になり、少しづつでも学び続けることをやめず、時々は達成感や満足感も得ることです。その結果として何か大成功を収めてしまう場合もあるでしょう。我々は皆さんが、職業人として人に喜びを与えられる創造力と真面目さを身につけ、社会で生き生きと活躍してほしいと願っています。そして皆さんには、自分にどんな適性や可能性があるのか、どんな専門力の獲得を目指すのがいいのか、についても時々は深く考えて頂きたいと思います。
「とりあえず」の繰返しだけで行動し、できるだけ楽をして卒業しようという方針で進んでいくと、卒業が近くなった頃に、就職試験の面接などで有効な自己PRができない(学業上の売りがない)中途半端な自分に気づくことになってしまいます。自分が今どんな研究を行っていて、どんな能力と経験と自信を得たのか、はっきり言えるようになることを目指すべきです。コース配属、研究室配属、卒業、(大学院入学、修了、)就職という関門の突破に向けて、この学修案内を隅から隅までよく読み、悔いのない充実した学生生活を送ってください。